【2023年11月13日 11:43 AM更新】
予防型歯科医院をスムーズに運営するコツ
松田歯科医院でメインテナンスと歯科治療を担当する 歯科医師の松田拓己です。 先生の歯科医院に通院されている患者さんを 治療とメインテナンスで分けると、 どちらの人数が多いでしょうか? 予防型が定着してメインテナンスの患者数が半分以上 になった院長先生から、頻繁に頂く相談があります。 「歯科衛生士が予防業務に専念できるように アシスタント業務を簡素化できませんか?」 メインテナンスで歯科衛生士が忙しくなると アシスタントで拘束するのが難しい、 あるいは「勿体ない」と感じられるようになります。 だからと言って、歯科助手の人数を増やすのは コスト面や求人難でおいそれとは行きません。 わたしも経験した悩みなのでよく理解できます。 診療のスタイルや機材を見直して、 できるだけ術者単独で治療を進められる体制を作るのが 基本的な対策。 しかし、スタッフの拘束時間が長くなって ストレスがたまる状況を無くすのには かなり苦労しました。 特に、インレーやクラウンの形成を始めると 「これからスタッフの手が塞がってしまう」 と、どんよりした気分になったものです。 と言っても、形成の際には基本的に一人で 行えますし、印象を練る時間はそれほど 長くありません。 問題は、印象採得が終わった後です。 松田歯科医院では、歯科衛生士に診療介助を してもらうことはほとんどないので 印象に石膏を注ぐのは歯科助手の担当。 寒天アルジネートの場合は、 印象を撤去した後に極力早く石膏を注いで 保湿箱の中に保管します。 不慣れな助手が作業を行うと、 技工室にこもったまま10分以上待たされる ことも珍しくありません。 この時間に電話が鳴ったり受付の対応が 必要になると、わたしや歯科衛生士が 治療を中断せざるを得ないのです、、、 インレーやクラウンの印象を行うたびに このようなストレスがたまっていては 身が持ちません。 と言っても、印象を保湿箱にためておいて 診療が終わってからまとめて石膏を注ぐのは 精度を著しく下げてしまいますね。 結局、セット時の調整時間が伸びて 適合の悪い修復物を装着することになったら 患者さんにも申し訳ありません。 このような問題に悩む先生には 「3in1トレー」の導入をお勧めしています。 次段では、印象~模型製作~トレーの洗浄に 関わる業務の簡素化について具体的に ご説明します。
咬合印象法を導入すべき11の理由
歯科医院の仕事には欠かせない 印象採得に関わる作業を一気に省力化できる 咬合印象法についてお伝えします。 クリニックが雇用できるスタッフの人数には 限りがありますね。 そのため、メインテナンスに通われる 患者さんの人数が多くなるほど、 歯科衛生士の確保が重要になってきます。 つまり、予防業務以外の作業を簡素化し 歯科衛生士以外のスタッフは 最低限の人数に抑える施策が必要。 たとえ、インレー1歯だけの印象採得でも 印象〜石膏注入〜トレー洗浄に費やされる 作業時間は膨大です。 通常、上下顎で印象しますので アルジネートの練和〜硬化した印象の撤去 まで10分前後はかかるでしょう。 咬合印象法では上下顎を同時に採得するので 印象材の練和〜トレーの撤去までは 5分程度で終わります。 そして、咬合印象法にはシリコン印象材を 使用しますので、石膏を急いで注入する 必要はありません。 印象をそのまま技工士さんに渡して 模型製作をお願いする形にすれば スタッフが行う作業は印象の練和だけ。 石膏の注入やトレーから印象材を剥がして 洗浄・消毒・滅菌をする手間がなくなり、 予防にかけるマンパワーを増やせます。 人件費=スタッフが業務にかける時間 と考えれば、業務の省力化は経営面でも 大きなメリット。 シリコン印象材等の材料費は増えますが 省力化で人件費の圧縮が可能となります。 さらに、開口した状態で上下を別々に 印象する従来法に比べて、咬合印象法は 模型の精度が高いことが証明されています。
歯列模型の咬合接触再現性―通法と咬合印象法の比較―(日本補綴歯科学会誌5 巻 (2013) 2 号)
林 亜紀子, 佐藤 正樹, 久保 大樹, 田中 睦都, 向井 憲夫, 田中 誠也, 田中 順子, C田中 昌博(大阪歯科大学 有歯補綴咬合学講座) 大阪歯科大学の講師である鳥井克典先生(有歯補綴咬合学講座) の論文には、患者さんの感想も紹介されています。
咬合印象法の有用性について
咬合印象法のメリットについてまとめますと ・印象に関わる業務のすべてが5分以内に完了する ・予防業務以外の作業の省力化 ・調整時間も短くなり、技工所の技術を正確に評価できる ・石膏注入に関わるエラーから開放される ・熟練したスタッフが不要:練和が容易、石膏注入不要 ・技工所に外注する際、石膏の硬化を待つ必要がない ・印象材硬化を待つ時間は最短で3分 ・スタッフが技工室から出てくるのを待つストレスから解放される ・印象材の消毒が容易 ・セットが終わったらトレーを廃棄して終わり(印象材の撤去・洗浄も不要) ・患者さんが楽:上下一回で採れる、閉口状態、 起こしておけるので「もう、終わったのですか?」と喜ばれます 次は、咬合印象法の具体的な手順についてお話します。
印象採得の人的コストを最小にするには?
歯科医院の業務の中でも作業時間が長く 人手を要する印象採得。 ここでは、咬合印象法に使用する機材と 具体的なステップについてご紹介します。 3in1トレーは上下顎の印象と咬合の3つを 一度で採得可能です。 数社から販売されていますが、 松田歯科医院では(株)BSAサクライの アットワンスを使用しています。 同社のHPではサンプルの請求が可能 ですので、導入を検討されている先生は ぜひご活用ください。 BSAサクライのサンプル請求用ページ 3in1トレーで咬合採得も可能 とされていますが、印象時に中心咬合位で 噛んでいるのか、確認は困難です。 そこで、念のために、当院では 咬合採得を従来通り行っています。 (スタッフの手間はほとんど増えません) 閉口状態で硬化を待ちますので、患者さんは 「楽ですね」と喜んでくださいますが 待ち時間は短いに越したことはありません。 そのため、口腔内の保持時間が2分30秒と 短めのシリコン印象材であるバーチャル (イボクラール)を使用しています。 バーチャルは親水性も高いそうなので マージン部等の再現性も良好です。 ウォッシュタイプのシリコン印象材を 支台歯の周りに注入する際は、 できればシリンジを使用した方が楽ですね。 ディスペンサーに先端の細いミキシングチップ を装着して、口腔内を印象するのは 不安定で握力も必要です。 シリコン用のディスポーザブルシリンジも 数種類ありますが、松田歯科医院では3M社の イントラオーラルシリンジを使用しています。 印象のたびにシリンジを捨てるのは不経済 な感じもしますが、ミキシングチップが不要 で印象材の無駄も減らせます。 何よりも、使用感が良好で細部の印象を スムーズに行えるので助かっています。 最近のシリコン印象材は親水性が高くなって いるそうですが、元々疎水性の材料である ことは変えようがありません。 特に、縁下マージンの印象を採る際には 止血剤を用いて歯肉圧排を行うのが必須。 ボスミン(エピネフリン)等で不安な場合は ウルトラデント社のビスコスタット・クリアー をお勧めしています。 同社の止血剤としてはビスコスタットが有名 ですが、鉄分を含むため歯肉に黒く着色する ことがあります。 また、止血効果が強すぎるためか、 歯肉縁下に使用すると術後に痛みを訴えられる 場合が多いようです。 ビスコスタット・クリアーの止血効果は ビスコスタットよりもマイルドなようですが 術後に痛みを訴えるケースはほぼありません。 また、歯肉に着色する心配もありません。 酸っぱくて味が悪いのが欠点ですが、 確実な印象採得のために我慢していただく よう患者さんにはお願いしています。 長くなってしまいましたが、 先生のクリニックの省力化に活用 していただければ幸いです。 次は、咬合印象法の具体的な手順 についてお知らせします。
診療の簡素化を実現するために
歯科治療では欠かせない印象採得。 重要な作業ですが 印象採得〜模型製作〜トレーの洗浄まで、 スタッフの時間を奪います。 光学印象を導入できれば、 印象採得以外のステップでスタッフの労力を 必要とすることはなくなりますね。 しかし、光学印象の機材は今だに数百万円〜 一千万円超と非常に高価。 それに比べて、ほとんどの歯科医院には シリコン印象材や歯肉圧排の器具が 備えられているはずです。 まず、3in1トレーをご用意いただいて、 咬合印象法を試してみてください。 すぐに、11のメリットは実感できるはずです。 ・印象に関わる業務のすべてが5分以内に完了する ・予防業務以外の作業の省力化 ・調整時間も短くなり、技工所の技術を正確に評価できる ・石膏注入に関わるエラーから開放される ・熟練したスタッフが不要:練和が容易、石膏注入不要 ・技工所に外注する際、石膏の硬化を待つ必要がない ・印象材硬化を待つ時間は最短で3分 ・スタッフが技工室から出てくるのを待つストレスから解放される ・印象材の消毒が容易 ・セットが終わったらトレーを廃棄して終わり(印象材の撤去・洗浄も不要) ・患者さんが楽:上下一回で採れる、閉口状態、起こしておけるので 「もう、終わったのですか?」と喜ばれます ※患者さんの感想については鳥井克典 先生(大阪歯科大学 補綴学講座) の論文にアンケート結果が紹介されています。
咬合印象法の有用性について
松田歯科医院で実際に行っている咬合印象法の手順は、 1.ウォッシュタイプの印象材で支台歯の周囲をマージン部まで覆う 2.両面に印象材を盛り付けた3in1トレーを噛んでもらう 3.硬化を待つ間に唾液が溜まるので、水平位ではなく座位にする 4.硬化したら、患者さんに開口してもらえばトレーは簡単に外れます と非常にシンプルです。 毎日のように行う診療の手順が簡素化できると 院長先生、スタッフ、患者さん、技工所の皆さん のストレスが緩和されます。
成長可能な予防型歯科医院の3大条件
予防型歯科医院はどこか特別な歯科医院 なのでしょうか? 患者さんだけでなく、友人の歯科医師からも 上のような質問を受けることが時々あります。 先生はどのようにお考えですか? わたしが上記の質問に答える際は 「予防の患者さんだけが通院する状態を 目指して成長し続ける歯科医院です」 とお伝えしています。 患者さんには 意外とすんなり理解していただけるのですが、 ほとんどのDr.はポカンとされます。 ブログを読んでくださっている先生方には それほど違和感は感じられない と信じていますが、、、 「予防の患者さんだけが通院する」状態に 近づけるには、修復・補綴治療の頻度を 減らし続ける必要があります。 そのため、松田歯科医院では 再治療をできるだけ避けることを目標に 努力してきました。 また、スタッフのマンパワーを予防に集中 させるためには、他の業務を簡素化する のが重要です。 これが成功すれば、予防に直接関与しない アシスタントの人数を最小限まで減らせます。 さらに、治療中心で回ってきた院内の体制を 予防中心へシフトしていくためには 院長先生ご自身の取り組みが不可欠。 これまでの話をまとめますと 「予防型歯科医院として成長する3大条件」 が出来あがります。 1.再治療のリスクを減らすために、修復・補綴治療の精度を確保する 2.マンパワーを予防分野に集中させる 3.より良い予防システムを構築するために院長が考え、実践する時間を生み出す 上記の3条件を満たせば、ユニット1台あたり 一ヶ月で130〜140名のメインテナンス患者を 診察できます。 つまり、ユニットが3台の歯科医院でしたら 毎月400名以上の患者さんに予防歯科を提供 できるようになれるのです。 これまで治療に費やされてきた時間や 人手を軽減できるシステム作りの第一歩として 咬合印象法の導入をお勧めいたします。
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