【2026年7月19日 3:02 PM更新】
「この業界は儲からないようになってるんです・・・」
若い先生方に質問です。 「行きつけのお店」って、 いくつくらいありますか? ジャンル問わずでも、 だいたい2〜3軒という方が 多いのではないでしょうか? わたしは数年前まで、 松田歯科医院の近所にある 小さな料理屋さんに 週2くらいで通っていました。 古い住宅地の中にある、 店主が一人で切り盛りする お店です。 老舗レストランで修業されたそうで、 素材の話や調理法まで その場で丁寧に教えてくれる。 「小さくても、味のわかる お客さんに美味しい料理を 出せれば幸せです」 そう語る店主が わたしは大好きでした。 仲間の歯科医師も連れて 何度か通いました。 ただ、一つだけ 困った点がありました。 料理が出てくるまで、 とにかく待たされるんです。 会計も電話も接客も、 全部一人でこなしている、 いわゆるワンオペですね。 接客中は当然 調理の手が止まりますから、 お客さんが増えれば増えるほど 待ち時間は伸びていく。 仲間を連れて行った手前、 気まずくなってしまって、 二度目に集まることは ほとんどありませんでした。 「フロア担当を一人雇っては どうですか?」 何度もアドバイスしましたが、 返ってくる答えは決まっていました。 ・飲食は利益率が低いから 人件費なんて出せない ・自分が修業した店の基準に 合う人材が見つからない 「うちみたいな小さい料理屋では、 人なんて雇えないんですよ」 これが店主の口癖でした。 わたしは繰り返し伝えました。 「有名店で身に着けた技術と 知識があるのだから、 数は少なくても、本当に 美味しい料理を求めている お客さんを集めて、単価を 上げれば解決するはずですよ」と。 しかし、返ってくる答えは いつも同じでした。 「ここは町中じゃないですし、 値上げしたら今のお客さんが 他の店に流れます。 飲食業界は儲からないように なっているんですよ。」 徐々にお店の活気は失われ、 わたしの足も遠のいて、 2〜3年後に閉店となりました。 最後に店主と会ったとき、 「もう飲食の店を開くつもりはない」 と話していたのが、 今も忘れられません。 店主は他にも、 駐車場が狭い、看板が目立たない、 と不満を漏らしていました。 確かに条件の良い物件ではなく、 そのテナントは 数年もたずに撤退するお店が 続いていました。 ところが、一年後—— 同じテナントで新装開店した お店が、なぜか大繁盛したのです。
腕さえ良ければ患者は集まる、と思っていませんか?
一年ほど経って、 同じテナントに 欧風料理のレストランが 開店しました。 わたしは和食党なので 正直あまり興味はなかったのですが、 ある日、お店の前を通りかかると 止めづらいはずの駐車場が 満杯になっているんですね。 繁華街から離れた住宅地で、 ランチ1,000円超えは珍しい 立地です。 しかし新しいお店は ランチが1,200〜1,600円。 相場よりかなり高めです。 気になって窓越しに 店内をのぞくと、 客層はほぼ100%が女性。 一人で入店する勇気がなく、 わたしは通いなれた中華料理店に 向かいました。 後日、近所の人に聞いてみたんです。 なぜあの店が、条件の悪いテナントで、 高めの値段設定なのに 繁盛しているのか? 結論は 「女性にとって嬉しい店だから」 というものでした。 正直、わたしにはピンと 来ませんでした。 ある人は、 「地産地消・有機野菜を使った ヘルシー料理が食べられるから」 別な人は、 「前菜・パスタ・スープが全部手作りで、 自家製パンが食べ放題」 もう一人は、 「食材の産地や生産者を説明してくれる。 食器ひとつひとつがしゃれている」 そして全員が共通して こう付け加えていました。 「女性の気持ちをよく理解してくれるので、 とても居心地がいい」 興味深いのは、 料理を作るのは店主一人という点は 前のお店と同じで、 待たされることもある、 ということです。 ただ、待たされている間、 フロア担当の女性が 追加のパンを勧めてくれたり、 さりげない気配りをしてくれる。 「あのお店だと話もはずむから、 時間がかかっても気にならないわね」 話し好きの女性からは 絶大な支持を受けている、 ということだけは よく分かりました。 さて、若い先生方に お伝えしたいのはここからです。 同じテナント、同じ「店主一人で調理」 という条件で、 なぜ片方は閉店し、 片方は繁盛したのか。 閉店した店主は 最後まで、こう言っていました。 「うちの業界は特別なんですよ」 これ、歯科業界でも 本当によく聞くセリフだと 思いませんか? ・保険点数が低いから儲からない ・立地が悪いから患者が来ない ・スタッフを雇う余裕がない ・値段を上げたら患者さんが 他の医院に流れる ・自分の基準に合う衛生士が いない ——閉店した料理屋の店主と 言っていることが、 ほとんど同じなんですよね。 一方で繁盛した欧風料理店が やったことは、シンプルです。 「対象となるお客さんを絞り込んで、 その人たちが喜ぶ施策だけを 徹底する」 ヘルシー志向の女性、 話が好きな女性、 食にストーリーを求める女性。 その人たちに刺さる要素だけを 徹底的に磨き込み、 逆に「50過ぎのおじさんが 一人でランチに来る雰囲気」は バッサリ切り捨てている。 ここが肝なんです。 対象から外れたお客さんが 入店をためらうくらいまで 振り切ること。 これが、小規模店で 明暗を分ける集客の肝です。 歯科医院も、まったく同じです。 勤務医のうちは、 「どんな患者さんも診られる 一人前のドクター」を 目指すべき時期です。 しかし、いざ開業となったら 話は別ですよね。 万人受けを狙った瞬間、 あの閉店した料理屋の店主と 同じ道を歩き始めることに なってしまう。 若い先生方に、 いま考えてほしいことがあります。 もし先生がご自身の医院を 開業するとしたら、 どのようなタイプの患者さんに 絞り込みますか? そして、その患者さんが 喜びそうな対応を、 20以上、書き出してみてください。 5個や10個ではダメです。 20を超えたあたりから、 他院がやっていない 本当にオリジナルなアイデアが 出てきますから。 先生のクリニックの ブレイクスルーは、 きっとそこにあります。 「うちの業界は特別なんですよ」 このセリフを口にした瞬間、 未来は閉ざされます。 逆に、このセリフを 一生使わないと決めた先生には、 想像以上の未来が待っている。 わたしは、そう信じています。
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